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植物は痛みを感じるの?

 ヒトなどの動物は、外傷を加えられると痛覚神経が活性化し、痛みのシグナルを全身に伝えます。マウスなどを用いた動物実験は、動物に痛みを与えない、またはできるだけ軽減するよう厳しい規制のもとで限定的に許可されていますが、植物を用いた実験では、そのような規制はありません。

 ところが最新の研究論文で、植物にも動物と似た、外傷を伝える仕組みが備わっていることが分かってきました。シロイヌナズナの細胞内でカルシウムイオン濃度変化を可視化すると、イモムシにかじられた部分で急速にカルシウムイオン濃度が上昇し、維管束の師管を通って離れた葉にも伝わることが分かりました。さらに、そのカルシウム濃度上昇により、植物の外傷応答に関わる遺伝子の発現や、植物ホルモンの一種ジャスモン酸の濃度が増加し、適切な外傷応答が制御されていることも分かりました。そして、このカルシウム濃度の上昇を引き起こすのは、動物の神経伝達物質としても使われているアミノ酸の一種グルタミン酸でした。グルタミン酸を受容して活性化するイオンチャネルが植物に発現しており、カルシウム濃度の制御を行っていたのです(論文)。

 もちろん、動物と似た仕組みを持っているからといって、植物に「痛い」という感覚があると判断できるわけではありませんし、表情などから推測することもできません。しかし、植物、微生物を含めた生物全般において、何をもって「殺生」と考えるべきなのか、難しい問いが提示されたともいえます。

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