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植物は痛みを感じるの?

 ヒトなどの動物は、外傷を加えられると痛覚神経が活性化し、痛みのシグナルを全身に伝えます。では、植物はどうなのでしょうか?

 最近の研究から、植物にも動物と似た、外傷を伝える仕組みが備わっていることが分かってきました。シロイヌナズナの細胞内でカルシウムイオン濃度変化を可視化すると、イモムシにかじられた部分で急速にカルシウムイオン濃度が上昇し、維管束の師管を通って離れた葉にも伝わることが分かりました。さらに、そのカルシウム濃度上昇により、植物の外傷応答に関わる遺伝子の発現や、植物ホルモンの一種ジャスモン酸の濃度が増加し、適切な外傷応答が制御されていることも分かりました。そして、このカルシウム濃度の上昇を引き起こすのは、動物の神経伝達物質としても使われているアミノ酸の一種グルタミン酸でした。グルタミン酸を受容して活性化するイオンチャネルが植物に発現しており、カルシウム濃度の制御を行っていたのです(論文)。

 動物と似た仕組みを持っているからといって、植物に「痛い」という感覚があると判断できるわけではありませんが、非常に興味深い研究結果です。

紹介論文: Glutamate triggers long-distance, calcium-based plant defense signaling. Toyota et al., Science 361(6407), 1112-1115 (2018) リンク: 埼玉大学豊田研究室:実際の植物動画



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