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睡眠不足は、腸のROSを介して短命を引き起こす

 2型糖尿病はインスリン抵抗性や分泌量低下によって血糖値が高くなる慢性疾患です。GLP-1受容体作動薬などの既存の治療薬には、脂肪だけでなく筋肉量も減少させてしまうという副作用があります。本論文の著者らは、この課題に対処するため、Gタンパク質共役受容体(GPCR)であるβ₂アドレナリン受容体(β₂AR)を標的としたGRK2バイアス型作動薬を開発しました。

 従来のβ₂AR作動薬は、Gsタンパク質を介してcAMPを生成することで、心拍数の増加や不整脈といった心臓への副作用を引き起こすことが問題でした。また、βアレスチンによるシグナル経路は、薬の長期的な効果を弱めてしまうことから、薬剤候補としては不向きとされていました。

 これに対し、今回開発されたGRK2バイアス型作動薬は、Gsタンパク質やβアレスチンの活性化を最小限に抑えつつ、GRK2を特異的に活性化することが実験的に示されました。この薬は、骨格筋でβ₂AR-GRK2を介したシグナル伝達経路を活性化し、インスリンに依存しないグルコースの取り込みを促進することで、血糖値を改善する効果が確認されました。

 前臨床試験では、この薬が心臓の肥大や心筋の壊死といった心臓への悪影響をほとんど引き起こさないことが示されました。特に、ラットを用いた毒性試験では、従来のβAR作動薬がわずか3日間の投与で心筋病変を引き起こすのに対し、GRK2バイアス型作動薬は半年間の高用量投与でも心筋病変は観察されませんでした。

 さらに、肥満マウスを用いた実験では、GRK2バイアス型作動薬をGLP-1受容体作動薬リラグルチドと併用することで、リラグルチド単独で見られる筋肉量減少を防ぎながら、脂肪量を減らすという相乗効果も確認されました。

 結論として、このGRK2バイアス型作動薬は、従来のβ₂AR作動薬が持つ課題を克服し、心臓への負担を抑えつつ非インスリン依存的に骨格筋代謝を改善するという、新たな治療戦略を示しています。これは、2型糖尿病や肥満の治療への応用にも期待できるものです。

紹介論文: GRK-biased adrenergic agonists for the treatment of type 2 diabetes and obesity. Cell 188, 5142-5156 (2025)

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