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骨肉腫細胞株のL-グルコース取り込み

 細胞がエネルギーとして利用できるものは、D-グルコースで、その鏡像異性体であるL-グルコースは利用できないと考えられています。本研究では、D-グルコースとL-グルコースの細胞への取り込みを可視化するための蛍光色素を新たに開発し、がん細胞株でのL-グルコースの取り込みの可能性を検討しました。

 ヒト骨肉腫の細胞株であるU2OS細胞を用いて解析したところ、どうも、U2OS細胞では、D-グルコースだけでなく、L-グルコースも細胞に取り込むことが分かりました。特にL-グルコースの細胞内への取り込みは、グルコーストランスポーターを介さない何らかの別の経路を介して取り込まれる可能性が示唆されました。

 骨肉腫は、100万人あたり年間わずか1~3人ほどが発症するという稀な疾患です。組織学的にもまたゲノム的にも多種多様で、臨床症状も多種多様であるため、骨肉腫の診断と治療は困難です。また、単一組織内の悪性と良性の腫瘍を明確に区別できる解析手法は存在しませんでした。そのため、今回開発されたL-グルコース可視化蛍光色素は、骨肉腫の診断に役立つ可能性があります。また、骨肉腫だけでなく、各種がん細胞でもL-グルコースを取り込む可能性が示唆されており、L-グルコースの細胞内への取り込み機構の解明は、悪性腫瘍の診断だけでなく、エネルギー産生メカニズムを解明する手掛かりとなる可能性があります。今後の研究の進展が待たれます。

紹介論文: Uptake of fluorescent d- and l-glucose analogues, 2-NBDG and 2-NBDLG, into human osteosarcoma U2OS cells in a phloretin-inhibitable manner Human Cell 34, 634-643, 2021

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