トピックス

消化管における新たなコレステロール吸収経路

 高コレステロール血症は、血中コレステロール濃度が高くなる疾患であり、動脈硬化などを引き起こす危険な疾患です。通常、血中コレステロール濃度は厳密に保たれており、特に消化管からのコレステロール吸収は、全身のコレステロール恒常性を維持するために重要な働きを担っています。

コレステロールが腸細胞に取り込まれる経路として、従来考えられていた経路は以下の通りでした。 ① コレステロールが細胞膜に発現するNPC1L1によって取り込まれる ② コレステロールはエンドソームにより小胞体へ輸送 ③ 小胞体でエステル化され、脂肪酸とともにカイロミクロンとなりリンパ管へ

 筆者らは、細胞膜結合ドメインと小胞体膜貫通ドメインを併せ持つAsterタンパク質を欠損させたAster-KOマウスでは、コレステロール吸収障害が引き起こされる現象を見出しました。さらに、Aster-KOマウスでは肝臓や血中のコレステロール濃度も低い値で保たれていることが分かりました。

 高コレステロール食をマウスに与えると、コレステロール取り込みが増大し、肥満症状を呈します。しかし、Aster-KOマウスでは肥満症状が抑制され、高コレステロール血症になる可能性が抑制されました。

 さらに、筆者らが開発したAsterタンパク質阻害剤Al-3dを投与したマウスでも、Aster-KOマウスと同様に、肥満症状が緩和されました。最後に、NPC1L1-KOマウスにAl-3dを投与し、コレステロールを投与するとカイロミクロンが減少したことから、Asterタンパク質がコレステロール取り込みを調整するメカニズムにNPC1L1は関与しない、非小胞輸送経路をたどる可能性が示唆されました。

 以上の結果から、消化管内のコレステロール吸収経路にNPC1L1を介する小胞輸送経路だけでなく、Asterタンパク質を介する非小胞輸送経路が存在することが分かりました。Asterタンパク質は薬理的に制御が可能であり、今後高コレステロール血症の新規治療標的として注目されています。

紹介論文: Ferrari et al. Aster-dependent nonvesicular transport facilitates dietary cholesterol uptake Science, 2023.

▲TOPへ戻る