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腸内細菌叢がCOPDの病因を調節

慢性閉塞性肺疾患 (Chronic obstructive pulmonary disease: COPD) は、正常な呼吸を妨げる気道の慢性閉塞を特徴とする疾患である。気道内の菌叢の組成がCOPDと関係していることは知られているが、腸内細菌叢との関係は明らかになっていない。筆者らは、喫煙によるCOPD症状が、抗生物質(AmpicillinとVancomycin)の事前投与により改善し、それらは糞便移植によっても再現された。このことから、腸-肺軸の存在を明らかにした。

COPD症状を改善する菌種をメタゲノムシーケンスにより予測し、COPD症状改善効果を示す有益菌株としてParabacteroides goldsteinii(以下、PG)を分離した。PG単独の事前投与により、COPD症状は改善した。PG由来のLPSは、大腸菌由来の炎症誘導性LPSと構造が異なり、マイルドな免疫応答を示すBacteroides属由来LPSの特徴を有していた。PG由来LPSと大腸菌由来LPS間の拮抗作用を検証し、PG由来LPSはTLR4受容体結合に関して競合することが示された。さらに、PG由来LPS投与(皮下投与)は、COPD症状を改善した。

喫煙マウスとPGを事前投与した喫煙マウスの腸と肺のシングルセルRNAseq、および血中メタボローム解析の結果から、PG由来のLPSが、腸のリボソームやミトコンドリア活性が変化することで、尿素回路が活性化し、血中アミノ酸を介して肺の炎症を抑制している可能性が示された。

紹介論文: Hsin-Chih Lai et al. Gut microbiota modulates COPD pathogenesis: role of anti-inflammatory Parabacteroides goldsteinii lipopolysaccharide Gut. 2022 Feb;71(2):309-321.

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