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NAFLDは、認知機能障害を引き起こす

 脂肪肝は、肝臓における現代病の一種と言われている疾患です。アルコール摂取による原因のほかに、非アルコール依存的な原因が存在しており、後者は通称NAFLD (non-alcoholic fatty liver disease ) と呼ばれています。この疾患は、偏食などの生活習慣の乱れによって引き起こされますが、この状態が続くと、肝臓の機能は徐々に低下していきます。

 本論文では、まず、NAFLD状態の患者とコントロール群を比較しました。記憶力テストとして、認知症診断にも用いられるMMSE, MoCA, RBANSを患者に行いました。言語力や注意力などの結果に差は見られなかったのに対し、記憶力に関する分野の点数には有意差が見られました。この結果から、NAFLD患者において短期記憶、長期記憶の障害が引き起こされていることが明らかになりました。続いて著者らは、NAFLD患者を、肝臓に炎症が引き起こされているNASH患者とその他の患者に分類して比較しました。この結果、肝臓の炎症が短期記憶の障害に関連することは示されなかったものの、長期記憶の障害に関連することが示されました。

 なぜこのような差が得られるのか、NAFLD患者とNASH患者の脳MRI画像を比較しました。 ここで、NASH患者特異的に、左脳海馬の体積が減少していることが示されました。

 この結果から、NAFLDの進行度と海馬の体積、海馬の活性化の間には負の相関があることを示しました。そして、海馬の体積、海馬の活性化と長期記憶能には正の相関があることを示しました。今後は、どのような因子によってこのようなことが起こるのか、その因果関係を明らかにする研究が必要です

紹介論文: Miao, Y. et al. The Presence and Severity of NAFLD are Associated With Cognitive Impairment and Hippocampal Damag.The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, dgad352

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