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食事に含まれるメチオニン量が脂肪肝を引き起こす?!

 メチオニンは、必須アミノ酸の一種として知られています。生体において重要な働きを担っている一方で、メチオニンは脂肪肝を引き起こすメカニズムに関連していることも知られていました。このメカニズムに関しては明らかにされていない点が多かったため、本論文では、異なるメチオニン量を含む食事 (低メチオニン食:MRD、通常食:ND、高メチオニン食:HMD) を与えたマウスを用いて比較する研究を行いました。

 HMDを与えたマウスは、NDを与えたマウスと比較しても体重が個体差レベルでしか変化しないことが明らかになりましたが、肝臓のみの重さは、有意に、HMDマウスの方が重くなっていました。逆に、MRDを与えたマウスでは、摂食量、飲水量が増加したにもかかわらず、体重がNDマウスよりも減少しました。このことから著者らは、食事の含有メチオニン量が体内の代謝経路に変化を与えていることを示唆しました。

 これらのマウスの血漿成分を解析した結果、含まれる脂肪酸の種類や、アミノ酸の種類が異なることが分かりました。HMDマウスには酸化された長鎖脂肪酸が多く含まれており、一方でMRDマウスでは短鎖脂肪酸が多く含まれていました。

 この結果を踏まえ、HMDマウス内の活性酸素量も調べ、有意に増加していることが脂肪酸の酸化に繋がっていることを示しています。活性酸素は生体において炎症を引き起こすなど、悪影響を与えることが知られているため、血中、肝臓におけるサイトカイン濃度についても調べ、炎症性サイトカインがHMDマウスで増加していることが分かりました。

 続いて、ATP産生や脂質生成に関連する遺伝子の発現量も調べました。MRDマウスにおいて脂肪が蓄積されないメカニズムや、HMDでは脂肪が蓄積されることが、エネルギー産生にどのような影響があるのかを調べています。ATP産生に関連する遺伝子発現量はHMDマウスよりMRDマウスの方が多かった一方、脂肪の産生に関連する遺伝子発現量はMRDマウスよりもHMDマウスの方が多く発現していることが明らかになりました。

 最後に、マウスにおいて肝臓で発現している遺伝子を調べた結果、H₂Sの蓄積量が遺伝子の発現量を制御していることが明らかになりました。メチオニンは硫黄原子を含む数少ないアミノ酸であり、体内における硫黄原子の果たす役割の重要性についても示唆しています。

 これらの結果から、メチオニンが肝臓における脂肪産生能について議論し、非アルコール依存性脂肪性肝疾患にメチオニンの過剰摂取が関与していることを示唆しました。

紹介論文: Yang et al, High dietary methionine intake may contribute to the risk of nonalcoholic fatty liver disease by inhibiting hepatic H2S production. Food Research International 158, 111507, 2022.

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