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肥満前後でのレプチン抵抗性

 レプチンとは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、摂食抑制や組織でのグルコース取り込み亢進など、抗肥満効果があります。レプチン受容体が機能不全となり、レプチンが作用しなくなることをレプチン抵抗性といいます。レプチン抵抗性を持つヒトやラットは、脂肪組織の肥大、脂肪肝、高血糖などの形質を示し、肥満となります。Zuckerラットはレプチン抵抗性を持つ変異型ラットであり、幼齢期の体重は野生型と変わりませんが、成体になると肥満の形質を示します。筆者らは、Zuckerラットの幼年と成年を用いて、レプチン抵抗性個体に見られる脂肪の蓄積や脂肪肝などが、レプチン抵抗性そのものに由来するのか、肥満に由来するのかを調べました。

 通常体重の幼齢Zuckerラットは、肝臓でのグルコース取り込みが亢進したほか、グルコース代謝に異常が見られました。また、肝臓での脂肪の蓄積も見られました。さらに、80%以上の個体が非アルコール性脂肪性肝疾患の症状を呈しました。脂肪組織でのグルコース取り込みに変化はありませんでしたが、脂肪細胞の肥大化や脂肪滴の増加は観察されました。これらのことから、肥満でなくても、レプチン抵抗性を持つことにより、肝臓や脂肪組織での脂肪蓄積が起こることがわかりました。

 肥満の成年Zuckerラットは、肝臓だけでなく脂肪組織においてもグルコース取り込みが増加しました。また、幼年より顕著に脂肪肝の特徴を示しました。さらに、非アルコール性脂肪性肝疾患が進行し、脂肪肝炎を発症している個体が40%程度みられました。このことから、肥満は肝臓での脂肪蓄積を促進し、脂肪性肝疾患を悪化させることがわかりました。

 さらに、肝臓や脂肪組織でのグルコース取り込みと、脂肪の蓄積には正の相関がありました。組織でのグルコース取り込みが、脂肪の蓄積を誘導している可能性が考えられます。

紹介論文: Leptin resistance before and after obesity: evidence that tissue glucose uptake underlies adipocyte enlargement and liver steatosis/steatohepatitis in Zucker rats from early-life stages

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