トピックス

季節や性別によるヒトのエネルギー摂取量の制御

生物学的な性差は代謝や行動に大きな影響を与えますが、紫外線を始めとした環境要因に対し、男女が示す反応の違いは明らかになっていません。また皮膚は、環境の影響を最も受け、そしてホルモンの分泌や受容を行う人体最大の臓器です。しかし、皮膚で行われるホルモンを介した生理反応が全身に与える影響については、研究が進んでいません。テルアビブ大学の研究チームは、季節や性別によってヒトのエネルギー摂取量が異なることに着目し、紫外線と皮膚における食欲ホルモン分泌の関係について調べました。

季節によって日射量つまり紫外線量が異なることから、研究チームはまず紫外線によって食欲や、食欲調節ホルモンの分泌量が変化するのか検証しました。すると、紫外線を浴びたオスのマウスではメスと比べ、摂食行動が促進し、食欲増進ホルモンであるグレリンの血中濃度が上昇していました。そこで、紫外線照射によって誘発されるグレリンの合成について、その経路を調べました。平常時、グレリンは胃で合成されています。しかし紫外線を浴びると、活性化したがん抑制遺伝子p53によって、皮膚でもグレリンの合成が行われることが判りました。その結果、食欲のバランスが空腹へと傾き、オスで求食行動の増進が起こります。また女性ホルモンの一つエストロゲンが、p53によるグレリンの合成を阻害するため、メスでは紫外線による食欲増進が引き起こされないことが明らかになりました。この紫外線によるグレリンを介したオスの食欲増進は、マウスだけではなくヒトでも同様に起こっています。

グレリンには学習能力の向上や、抗不安作用があることが知られています。皮膚で産生されたグレリンが脳機能に与える影響について研究が進んでいけば、紫外線を使った新たな治療法や学習方法が確立されていくことが期待できます。

温度感受性カルシウムチャネルの同定や、STATリン酸化するメカニズムなどは、まだ明らかになってはいません。しかし、著者らの今後の展望として、候補因子が挙げられており、カメの温度依存的性決定のメカニズム全貌が明らかになる日は近いかもしれません。

紹介論文: Parikh S et al., Food-seeking behavior is triggered by skin ultraviolet exposure in males. Nature Metabolism, 4, 883-990, 2022

▲TOPへ戻る