Topics No.100

扁桃体アストロサイトの老化は不安と高血糖を引き起こす

神経・脳

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扁桃体アストロサイトの老化は不安と高血糖を引き起こす

慢性ストレスは、不安などの精神症状だけでなく、高血糖やインスリン抵抗性といった代謝異常を引き起こすことが知られています。扁桃体はストレス応答と全身の糖代謝調節に関与する重要な脳領域ですが、慢性ストレスによる扁桃体の変化が、どのように末梢の代謝異常につながるのかは明らかになっていません。本研究では、扁桃体アストロサイトの代謝異常に着目し、慢性ストレスによる情動異常と血糖調節障害を結びつけるメカニズムの解明を目的としました。

まず、慢性ストレスを負荷したマウスでは、不安様行動の増加に加え、耐糖能の低下やインスリン抵抗性が認められました。扁桃体の単一核RNAシーケンス解析から、アストロサイトにおける細胞老化関連経路の活性化が示されました。さらに、遺伝子発現解析により、解糖系酵素であるヘキソキナーゼ2(HK2)の発現低下が明らかになり、アストロサイト特異的にHK2を欠損させたマウスでも表現型が再現されました。また、転写因子PBX1がHK2の発現を制御することが示され、慢性ストレスによるPBX1–HK2経路の抑制が病態形成に関与すると考えられました。

次に、メタボロミクス解析から、HK2の低下に伴うセリン代謝異常が明らかになりました。通常、アストロサイトは解糖系の中間代謝物を利用してL-セリンを合成し、ニューロンへ供給します。ニューロンではL-セリンがD-セリンに変換され、NMDA受容体を介したシナプス機能の維持に寄与します。しかし、HK2欠損によってアストロサイトのL-セリン量が減少し、ニューロンのD-セリン量やシナプスタンパク質の発現が低下しました。さらに、扁桃体では神経活動の過剰な興奮やシナプス可塑性の異常が認められました。

また、膵臓の神経支配を三次元的に解析した結果、慢性ストレスによって交感神経支配が増加し、副交感神経支配が減少することが示されました。ウイルストレーシングや神経活動の測定から、扁桃体と膵臓を結ぶ自律神経ネットワークの血糖調節への関与が支持され、L-セリン補充や老化細胞除去薬の投与により、神経回路の異常、不安様行動、糖代謝異常が改善されました。

以上より、本研究は、慢性ストレスによる扁桃体アストロサイトのPBX1–HK2経路の抑制が、細胞老化とセリン代謝異常を引き起こし、神経回路および膵臓の自律神経調節を介して情動異常と血糖調節障害につながることを示しました。

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