Topics No.98

ヒト心臓機能を活性化するSGLT2阻害薬

代謝

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ヒト心臓機能を活性化するSGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬は2型糖尿病の治療薬として開発され、グルコースの再吸収を担うトランスポーターであるSGLT2を阻害することで血糖値を下げる薬です。また、臨床試験によって糖尿病の有無に関わらず、心不全患者の死亡や再入院を大きく減らすことが分かっていました。ところが、この薬の本来のターゲットであるSGLT2は心臓に発現しておらず、なぜ心臓に影響があるのか、そのメカニズムは長年謎のままでした。

研究チームは、心臓移植を受けた患者から提供されたヒトの心臓組織を灌流し、代表的なSGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンを直接投与する実験を行いました。すると、糖や脂肪酸などの燃料の取り込みが増え、心臓のエネルギー代謝が全体的に活性化し、心筋の収縮力まで改善することがわかりました。

これらの実験において、本論文ではPANK1(パントテン酸キナーゼ1)に注目しています。この酵素は、パントテン酸をリン酸化する、CoA合成の律速酵素です。CoAはエネルギー代謝に必要な物質であり、心不全患者では非心不全患者と比較してCoAおよびその関連代謝物が減少していることもわかっています。研究チームは、心臓組織へのエンパグリフロジン添加がパントテン酸のリン酸化を引き起こし、組織内のエネルギー代謝物質を増加させることを突き止めました。また、PANK1は心臓に高発現している一方、心不全患者では心臓でのPANK1発現量が低下していることから、PANK1とエンパグリフロジンが直接結合するのではないかという仮説を立て、免疫沈降法などを用いて、この仮説が正しいことを示しました。

以上のことから、SGLT2阻害薬は心臓においてPANK1に直接結合することで活性化することが明らかとなりました。これにより心臓内のエネルギー代謝が促進され、心機能の改善や筋収縮力の向上が現れることが示されました。

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