Topics No.96

睡眠不足が迷走神経を狂わせ腸幹細胞を傷つける

神経・脳

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睡眠不足が迷走神経を狂わせ腸幹細胞を傷つける

睡眠障害は慢性疾患の発症に関わっており、特に腸疾患にも悪影響を及ぼすことが明らかになってきています。しかし、その詳細なメカニズムには不明な点が多く残されていました。

研究者らは、マウスを2日間持続的な睡眠不足状態にさせる実験を通じて、この謎の解明に挑みました。まず、睡眠不足によって小腸の絨毛が短くなり、陰窩が萎縮することを確認しました。その根本的な原因を調査したところ、組織の再生・維持を司る腸幹細胞(Olfm4陽性細胞)において翻訳ストレス応答が誘導され、細胞内に活性酸素(ROS)が異常に蓄積していることが示されました。

さらに、睡眠不足は腸内におけるセロトニンの急増と密接に関連していることが判明しました。睡眠不足のマウスの腸内では、セロトニンが過剰に放出されるだけでなく、セロトニン輸送体(SERT)による再取り込みが減少することで、セロトニンが組織内に滞留していました。

研究者らは、この悪影響が迷走神経を介しているという仮説を立て、迷走神経を切断させたマウスで検証を行いました。その結果、迷走神経を切断させたマウスは、睡眠不足になってもセロトニン濃度が正常に保たれ、腸幹細胞の減少も防げることを発見しました。また、迷走神経から過剰に放出されるアセチルコリンが、セロトニン放出のトリガーとなっていることも示唆されました。

この神経回路の起点を特定するため、研究者らは延髄の迷走神経背側運動核(DMV)に着目しました。化学遺伝学的手法を用いて睡眠不足マウスのDMV活動を抑制したところ、腸へのダメージが劇的に低減しました。

本研究により、「脳のDMVが異常興奮し、迷走神経を通じてアセチルコリンが分泌され、それが腸内のセロトニン急増を招いて活性酸素を蓄積させ、最終的に腸幹細胞の機能不全を引き起こす」という、睡眠障害が腸疾患を誘発する一連の病理回路が特定されました。研究者らは今後の展望として、慢性的な睡眠障害における迷走神経回路について研究を進め、迷走神経の長期的な活性化が炎症性腸疾患の発症に関与するかを検証したいと述べています。

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