代謝・精神神経
妊娠中のお母さんが肥満だと、生まれてくる子どもに発達障害(自閉スペクトラム症など)が増えることが知られていましたが、その理由の一端が「腸内細菌」にあることが今回の研究で明らかになりました。
マウス実験では、肥満のお母さんから生まれた子ども(MHFD)は、普通の食事のお母さんから生まれた子ども(MRD)に比べて、他個体への関心や交流が乏しく、社会性が低下していました。ところが、両者を一緒に飼育すると、便を介して腸内細菌が共有され、MHFDの子の社会性も改善しました。さらに無菌マウスにMHFDの子の腸内細菌だけを移植すると社会性の低下が伝わり、逆にMRDの子の細菌を移植すると正常な社会性が保たれたことから、腸内細菌そのものが社会性行動を左右していることが確かめられました。
脳の中では、仲間との交流によって強化されるはずの「報酬系」の神経反応が、MHFDの子では起こらず、また「愛情ホルモン」であるオキシトシンを作る脳細胞も減少していました。そして、MHFDの子の腸内で特に減っていた菌こそが「L. reuteri」でした。この菌を飲水に加えて補ったところ、オキシトシン産生細胞、脳の報酬反応、社会性行動のいずれもが回復しました。他の乳酸菌ではこの効果は見られず、オキシトシンを直接投与しても同様の改善が得られたことから、L. reuteriはオキシトシンを介して脳に働きかけていると考えられます。
つまり、母親の肥満が子どもの腸内細菌を乱し、特定の菌の減少がオキシトシン系の異常と脳の報酬回路の不調を招き、それが社会性の欠損につながるという一連の因果関係が示されたことになります。そして、その原因菌を補うだけで社会性の欠陥を回復できる可能性を示した点に、この研究の意義があります。