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糖尿病治療薬候補GPR119/GPR40

これまで糖尿病治療薬として多様な標的を持つ薬剤が開発されてきました。現在広く使用されているメトホルミンなどのビグアナイド系薬剤や、セマグルチドなどのインクレチン製剤は、インスリン感受性の改善や食欲抑制に有効である一方、消化器症状や嘔吐といった副作用が問題となっています。また、これらの薬剤は長期的な体重管理や治療継続性の面で課題が残ることも指摘されています。こうした背景から、2025年にKallyope社は新たな作用機序を持つ GPR119アゴニストK‑833と GPR40アゴニスト K‑757を開発しました。これらの受容体は腸内分泌細胞に発現し、栄養刺激に応答してホルモン分泌を促進するため、より生理的な経路を利用した糖尿病治療薬として期待されています。マウスおよびヒト腸オルガノイドにK‑833/K‑757を投与したところ、消化管ホルモンであるGLP‑1やPYYの分泌が単剤投与よりも強く増加しました。これはGPR119が増幅経路を、GPR40が惹起経路を活性化することで、ホルモン分泌を増強した結果と考えられています。さらに、生体マウスへの共投与では血糖値の低下と体重減少が確認され、消化管ホルモン分泌の増強が生体レベルでも有効に作用することが示されました。フェーズ1臨床試験でも、健常者において血中GLP‑1とPYYの上昇が認められ、ヒトでも同様の作用が再現されました。一方で、インクレチン製剤と同様に吐き気などの副作用も報告されているため、今後は副作用を抑えつつ、最大の効果を得るための投与量や投与方法の検討が求められます。これらの結果から、K‑833/K‑757は新たな糖尿病治療薬としての可能性を有していますが、長期的な有効性や安全性を評価するさらなる臨床研究が必要です。

紹介論文: Gut enteroendocrine cell activation using a combination of GPR119 and GPR40 agonists results in synergistic hormone secretion in mice and humans. Cell Metabolism 2026

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