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食べた後に寝てしまう仕組みに腸管迷走神経経路が関わっていた

私たちは食後に眠くなることを日常的に経験しますが、その現象を担う神経回路の基盤や、消化管から脳へ情報を伝える迷走神経との関係は、これまでほとんど解明されていませんでした。本研究は、この「食後睡眠」がどのような神経経路を経て誘導されるのか、その全容を解明することを目的としています。

まず著者らは、マウスを一度絶食させた後に再び餌を与える「再摂食モデル」を用い、空腹時と食後の睡眠動態を比較しました。脳波および筋電図の解析から活動状態を分類したところ、食後では覚醒時間が有意に減少し、ノンレム睡眠の時間が増加することを確認しました。

この睡眠変化の起点を探るため、消化管の反応に着目した検証を行いました。その結果、食後睡眠は胃や十二指腸の状態変化によって引き起こされ、その情報が迷走神経を介して脳幹の孤束核(NTS)へと伝達されることが判明しました。

さらに詳細な解析により、NTSのGABA作動性ニューロンがこの情報を受け取り、視床下部の室傍核(PVH)へ抑制性の入力を送っていることが明らかになりました。つまり、本来は覚醒を維持するために働いているPVHの活動を、この回路が抑え込むことで、結果としてノンレム睡眠が誘導されるという仕組みです。

以上の知見は、食後の眠気が単なる疲労やホルモンによる副次的な反応ではなく、末梢組織からの入力によって脳の覚醒システムが直接コントロールされていることを示唆しています。本研究は、消化管から脳へのフィードバックが睡眠を誘導する具体的なプロセスを突き止めた点で、極めて重要な意義を持つものです。

紹介論文: The gut vagal sensory pathway drives postprandial sleep via activation of PVH-projecting GABAergic neurons in the NTS. Nature Communications 2025

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