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高齢マウスの記憶形成を回復

 脳実と頭蓋骨の間や、脳室(脳内部の空間)は、脳脊髄液と呼ばれる無色透明な液体で満たされています。脳脊髄液は、成人男性で約150 mL存在し、絶えず循環しながら1日で何度も入れ替わっていることが知られています。脳脊髄液の構成成分のほとんどは水であったため、脳脊髄液の機能に着目した研究は盛んではありませんでした。

 今回、スタンフォード大学の研究チームは若いマウスから採取した脳脊髄液を、高齢マウスに投与すると、高齢マウスの記憶力の定着が、若いマウスと同等レベルまで回復することを発見しました。そこで、脳脊髄液の機能を詳細に明らかにするために、若いマウスの脳脊髄液投与後の海馬の遺伝子発現を網羅的に解析しました。すると、若いマウスの脳脊髄液を投与されると、オリゴデンドロサイトやミエリン鞘関連遺伝子の発現レベルが上昇していることが明らかになりました。

 次に研究チームが着目したのは線維芽細胞成長因子17(Fgf17)です。Fgf17は発達期の脳内に多量に存在し、血管形成に関与していることが報告されていますが、神経系へ及ぼす影響については不明でした。Fgf17は加齢とともに発現レベルが低下することが報告されています。そこで研究チームは、高齢マウスにFgf17のみを投与し、記憶力定着テストを行いました。すると、Fgf17を投与されたマウスは、記憶力の定着が改善されることが明らかになりました。

 以上の結果から研究チームは、脳脊髄液中に存在するFgf17がオリゴデンドロサイトの形成やミエリン鞘の発達を介して、老齢マウスの記憶形成を回復している可能性を見出しました。この研究がさらに進めば、記憶力低下を伴う神経変性疾患に対する新たな治療法の提示が期待できそうです。

紹介論文: Young CSF restores oligodendrogenesis and memory in aged mice via Fgf17. Iram et al., Nature 2022



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