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アストロサイトの放出する物質が記憶形成を促進

 アストロサイトはニューロンの成長に必要な物質を輸送する働きがあるが、その他にも神経細胞の振る舞いにアストロサイトが関連していることが示唆されている。ただ、具体的なメカニズムについては分かっていないことが多く、本研究では、そのメカニズムの一端を解明すべく、アストロサイトの放出するApoEという粒子に着目した。

 著者らは、ApoEに含まれるmiRNAに着目し、このmiRNAが神経細胞内におけるコレステロール生合成を促進するmRNAを抑制していることを示した。コレステロール生合成が抑制されれば、コレステロールの前駆体であるアセチルCoAが細胞内に蓄積しているだろうという予測の元、細胞内でのアセチルCoAの局在を調べた結果、その多くが核内に存在していることから、アセチルCoAがヒストンアセチル化に寄与している可能性について着目した。ApoEの作用を受けたニューロン、ApoEの機能をshRNAでKDしたニューロンを比較することで、そのアセチル化量の減少に有意な差が存在することを示し、ApoEのもつ機能でヒストンアセチル化が引き起こされていることを示した。

 これらの機能がマウスで実際に起こっているのか、学習実験を行い、その状態でApoEが正常に働く個体とKD個体について、コレステロール生合成関連mRNA発現量、ヒストンアセチル化レベルを比較した結果、in vitroと同様の結果が得られた。ヒストンアセチル化は翻訳後修飾であり、遺伝子の転写が促進されることが分かっている。神経細胞内においてFos, Egr1, Arcはシナプスの強化に関与し記憶の形成を行う遺伝子として知られている。ChIP-seqによってこれら遺伝子のプロモーター領域のヒストンアセチル化レベルが上昇している事を示すことで、ここまでの結果が記憶の形成に関与していることを示した。

 また、ヒトでの研究に応用すべく、ヒトに存在しているApoEのアイソフォームについても解析を行い、アルツハイマー病の原因因子とされているApoEε4について、ApoEε3よりもmiRNAの量が少なく、記憶形成の点で劣っている可能性についても示唆している。

紹介論文: Astrocytic ApoE reprograms neuronal cholesterol metabolism and histone-acetylation-mediated memory. Li et al., Neuron 109, 959-970, 2021



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