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腸内細菌と化学物質が引き起こす腸炎研究チームは以前、様々な日用品に含まれる抗菌性物質トリクロサン(TCS)がマウスの大腸で炎症を誘引することを明らかにしましたが、今回、大腸におけるTCSの特異な代謝機構の存在を示すとともにその分子実体を同定しました。 マウスにTCSを含む食事を与えたところ、消化管からはTCSの他、不活性なTCS-G、TCS-Sulfateの2種類の代謝産物が検出されました。多くの臓器でTCS-G、TCS-Sulfate濃度が高かった一方大腸ではTCSが大部分だったことから、大腸に特異なTCS代謝機構の存在が示唆されました。 次に研究チームはTCS-GをTCSに再活性化(脱グルクロン酸化)する機構の存在を予測し、炎症の誘引に必須である腸内細菌の働きに着目しました。マウス、ヒトの腸内細菌をin vitroで培養したところTCS-G脱グルクロン酸化活性を示し、また無菌マウスと通常マウスにTCSを与えたところ無菌マウスでのみTCS-G濃度の増加が確認されました。これより、腸内細菌がTCS-Gを脱グルクロン酸化することが示されました。脱グルクロン酸化の分子実体が様々な物質に作用する酵素GUSであると考えた研究チームは、そのオーソログを分類してTCS-G脱グルクロン酸化活性を調べました。その結果、Loop1と呼ばれる構造を含むGUS、および補助因子FMNが結合したGUSが高い活性を示しました。最後に、GUS阻害剤(GUSi)の添加がGUSによるTCS-G脱グルクロン酸化機能に及ぼす影響が調べられました。結果、GUSiの一種UNC10201652がLoop1構造含有GUSおよびFMN結合GUSの双方を阻害し、TCSの再活性化による腸炎が抑制されることが確認されました。GUSiの添加に伴う腸内細菌の組成や炎症性遺伝子発現量の変化は見られなかったため、GUSiはTCSに起因する腸炎におけるGUSの有用なプローブであると考えられました。論文の末尾では、TCSの腸に対する潜在的な有害性が警告されています。今後、自然免疫や腸炎の癌化とも連関するとされるTCSの腸への影響の詳細な調査と、化学物質の作用に腸内細菌が及ぼす影響の評価という本論文の視座が敷衍された研究が待望されます。
紹介論文: Microbial enzymes induce colitis by reactivating triclosan in the mouse gastrointestinal tract. Zhang et al., Nature Communications 13(136), 1-14(2022)
