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不安行動に影響を与える腸内細菌代謝物自閉症は神経発達障害(非定型神経発達)の一つであり、患者はコミュニケーション障害や不安行動の増加といった症状を示します。自閉症のモデルマウスから、正常なマウスと比べ腸内細菌代謝産物である4-エチルフェニル硫酸 (4EPS)が多く検出されることが既に報告されていました。また人工的に合成した4EPSをマウスに投与すると、不安行動が増加することが分かっています。そこで、本論文では4EPSが脳や行動に与える影響に着目し、その機能を調べました。
まず研究グループは、4EPSが体内で合成される経路を調べました。その結果、腸内細菌が食物由来のチロシンを4-エチルフェノール(4EP)に変換し、これを宿主が硫酸化することで4EPSが合成されることを突き止めました。この経路に関与する遺伝子はヒトのものと相同性が高く、マウスと類似した経路があると考えられます。次に、高効率で4EPを産生する細菌を人工的に作りました。そして、4EP産生細菌を腸に定着させたマウス(4EP+マウス)とさせていないマウス(4EP-マウス)の脳を比較したところ、4EP(S)は脳の特定の領域の活動パターンを変化させることが分かりました。また4EP+マウスでは脳のオリゴデンドロサイトの成熟度が低下し、軸索のミエリン形成が減少していました。最後に、研究グループは行動実験を行い、4EP(S)と行動の関連を調べました。4EP+マウスでは4EP-マウスと比べ不安行動の増加や、社会的交流の減少がみられました。興味深いことに、認知や運動機能に関しては有意な差はありませんでした。
これらの結果より、腸内細菌によって産生された4EP(S)は脳の神経発達に影響を与えることで、不安行動を変化させることが示唆されました。4EPSの増加は霊長類における異常な反復行動と関連しており、自閉症患者では血漿中の4EPSレベルが有意に上昇しています。研究グループは、4EP(S)は、哺乳類の神経伝達物質に類似し、動物の脳活動や複雑な行動に影響を与える微生物由来の神経活性分子の典型例であるという仮説を提唱しています。
紹介論文: A gut-derived metabolite alters brain activity and anxiety behaviour in mice. Needham et al., Nature 602(7898), 647-653(2022)
