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認知的柔軟性を前頭葉深部ニューロンが調整する

 認知的柔軟性は、変化する環境に適応する能力である。これを測定するために、set-shiftingというタスク切り替え実験が用いられる。set-shiftingを行うにあたり、脳の前頭前皮質(prefrontal cortex: PFC)という領域の活動が関与していることがわかっていたが、その領域の細胞レベルでのメカニズムは不明であった。そこで筆者らはset-shifting実験と同時に脳内で二光子カルシウムイメージングを行うことで、PFC細胞の活動を観察した。

 

 まず、筆者らがおこなったset-shifting実験では、マウスの頭を固定し、その左右からひげへの刺激(35 Hz vs 155 Hzまたはクリック vs 210 Hz)と匂い刺激(アーモンドオイル vs オリーブオイルまたはオレンジオイル vs ごま油)を組み合わせて提示した。それをうけてマウスは目の前にある飲み口の左右どちらかを選んでなめるが、その際に提示された刺激に対して正しい反応ができれば飲み口から水を得ることができた(例:左から35 Hz、右から155 Hzの刺激を受けた時、左の飲み口が正解)。マウスはトライ&エラーを繰り返すことで、どのような刺激に対してどちらの飲み口を選択すれば水が得られるかのルールを覚えた。そのあと、ルール変更を何回か繰り返し、各試験でのマウスの行動の変化を観察するとともに、二光子イメージングによりマウスPFC内のニューロンの応答を観察した。その結果、筆者らはひげ刺激や匂い刺激へのニューロンの反応は刺激中に起こっているのに対し、飲み口を舐めたことや、水を得たことに対するニューロンの反応は刺激後に起きていることを明らかにした。このことから、PFC内のニューロンの応答は不均一であることが示唆された。また、あるルールの試験の後に光遺伝学的手法でPFCのニューロンを阻害したところ、直後の同様のルールの試験でのパフォーマンスが低下した。このことから、PFCのニューロンは前の試験のフィードバックをモニターするのに重要だということがわかった。さらにPFC内のニューロンを詳しく見てみると、飲み口を舐めたこと、水を得たことに対する反応は、より深くに位置する投射ニューロンの方が鋭敏であることが分かった。そこで軟膜表面と深部のニューロンのそれぞれから上流のニューロンをRabies tracingによって追跡したところ、深部のニューロンの方が尾腹ACCからの入力を多く受けていたことが分かった。この求心性プロファイルの違いが、PFC細胞の機能的不均一性の原因ではないかと筆者らは考えている。

 

 以上の結果より、PFCの深部の投射ニューロンが以前までの結果のフィードバックをモニターすることによって認知的柔軟性に強くかかわっていることが示唆された。今後、このようなフィードバックがアセチルコリンをはじめとしたどのような神経伝達物質によって媒介されるのかといったことまで明らかになることが期待される。

紹介論文: Prefrontal deep projection neurons enable cognitive flexibility via persistent feedback monitoring. Spellman et al., Cell 184, 2750-2766 (2021)



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