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記憶の貯蔵方法

 我々が学習した記憶は、いったいどのような形で脳内へ貯蔵されるのでしょうか。

 

 動物が学習をすると、脳のニューロンの一部が活性化します。同時に活性化したニューロンはより強いシナプス結合で結ばれるようになり、その後似たような経験をし集団内の細胞の一つが活性化した場合、同じ集団の他の細胞も同時に活性化するようになります。このように、細胞集団という形で脳内に貯蔵された記憶を記憶痕跡と呼びます。

 

 記憶痕跡についてはまだ分かっていないことも多く、とくに繰り返しの学習の際に記憶痕跡がどのように変化するかは未だ不明です。

 

 紹介論文では、筆者たちは、恐怖音条件付けで学習を行った際に活性化した細胞に、ハロロドプシン(黄色光の照射で神経活動を抑制するイオンポンプ)を発現させ、それらの細胞の神経活動を抑制したときの恐怖行動がどのように変化するかを調べました。すると、一度しか学習を行っていないマウスの恐怖行動は減少するのに対し、二度学習を行ったマウスの恐怖行動の割合は変化しないことが分かりました。つまり、一回目の学習で形成された記憶痕跡は、二回目以降の学習に必ずしも必要ではないということです。

 

 それでは、一度目に形成された記憶痕跡は、二度目の学習を行うと完全に不要なものになってしまうのでしょうか。一度目の記憶痕跡をチャネルロドプシン2で強制的に活性化させたところ、一度だけ、二度、学習させたいずれの場合においてもマウスの恐怖行動は増加しました。これにより二度学習を行った後にも、一度目の記憶痕跡には記憶を想起させる力が残っているということが分かりました。

 

 これらの結果は3回目以降の学習にも当てはまることが分かりました。このようにして、最初の学習で活性化した細胞とは違う細胞が再度細胞集団を構成することによって記憶学習は行われていくと考えられます。

紹介論文: Turnover of fear engram cells by repeated experience. Cho et al., Current Biology 31, 5450-5461 (2021)



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