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体内の大腸菌の遺伝子を操作する?!

 近年、腸内細菌と糖尿病や心不全などの様々な病気との関連が明らかになってきています。現在では腸内細菌叢を健常者に近づけるためのアプローチとして食生活の改善や、糞便移植などの細菌を外部から導入するといった方法が知られています。本論文では、体内の腸内細菌への新しいアプローチとして、細菌へ感染するウイルスの一種であるファージを用いて体内の腸内細菌の遺伝子操作を行い、腸内細菌代謝産物の産生を停止または変更するといった方法を提案しています。

 まず研究チームは、マウス腸内の大腸菌にM13ファージを介してプラスミドを導入できるかを確かめました。その結果、コントロールでは抗生物質処理によって糞便中の大腸菌量は大きく減少しましたが、抗生物質耐性遺伝子をM13ファージを介して大腸菌に導入したマウスでは多くの大腸菌が生存しており、M13ファージを介したプラスミドの導入が可能であることが分かりました。

 そこで、研究チームはin vitro、in vivoで大腸菌にM13ファージを介して遺伝子改変ツールであるCRISPR-Cas9を作用させ、sfgfp遺伝子をノックアウトする実験を行いました。その結果、コントロールと比較してsfgfpを発現している大腸菌は減少しており、標的遺伝子のノックアウトに成功しました。また、M13ファージを介してsfgfp を標的とするCRISPR-Cas9を作用させたにも関わらずsfgfpを発現している大腸菌の導入プラスミドの配列を調べたところ、CRISPR-Cas9が作用するのに必要な配列が欠失していたことが分かりました。

 以上のように、研究チームはM13ファージを介してマウス腸内の大腸菌にCRISPR-Cas9を作用させ、標的遺伝子をノックアウトすることに成功しました。しかし、この手法は経口投与したM13ファージが腸まで到達するまでの生存率が低い事や、プラスミドの導入に成功したとしても一部の大腸菌では導入プラスミドの欠失が起こり遺伝子操作が上手くいかない事など多くの問題点があります。実用化には多くの壁がありますが、この研究が進めばいつかウイルスを飲むことによって体内の大腸菌を遺伝子操作し、病気を治療する未来が来るかもしれません。

紹介論文: Phage-delivered CRISPR-Cas9 for strain-specific depletion and genomic deletions in the gut microbiome. Lam et al., Cell Reports 37, 109930 (2021)



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