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時計遺伝子が寿命に関与

 体内時計を生み出す時計遺伝子Periodの発見で、2017年に3人のアメリカ人科学者がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。おそらく多くの人が、朝日を浴びると目が覚め、夜になると眠気を感じているでしょう。このように、毎日決まった周期で訪れる生理現象を概日リズム、もしくは体内時計と呼んでいます。私たちの体内を構成するほとんどの細胞が、概日リズムで転写活性が変化する時計遺伝子を持ち、概日リズムが破綻すると睡眠障害だけでなく、癌や不妊症、メタボリックシンドロームなど数多くの疾患が引き起こされることが知られています。

 しかし2020年、時計遺伝子Periodに関する驚きの研究が報告されました。遺伝子改変技術によりPeriod遺伝子を欠損させたショウジョウバエは、野生型ショウジョウバエと比べて長生きすることが明らかになりました。コロンビア大学の研究チームは長寿の仕組みを解明するために、Period遺伝子欠損ショウジョウバエの代謝反応について調査を始めました。するとPeriod遺伝子欠損ショウジョウバエは野生型ショウジョウバエと比較すると、摂食量は多いが脂肪の蓄積は少ないこと、体温維持能力が高いことを見出しました。次に研究チームは、呼吸を司るミトコンドリアに焦点を当て、機能解析を行いました。すると、Period遺伝子欠損ショウジョウバエでは、エネルギー合成量に変化はないものの、脱共役反応(ATP合成を伴わないプロトン移動)が増加していること、脱共役反応を司るUCPタンパク質の発現量が有意に増加していることを発見しました。

 最後に研究チームは、UCPが増加することと長寿の関連について調べました。多くの生物は老化に伴い腸内環境は悪化し、重大な疾患を引き起こすこともあります。しかし、Period遺伝子欠損ショウジョウバエではUCP量が増加し、腸内のROS(活性酸素種)が抑制されていること、腸管バリアがより強固になり、悪性腫瘍の過分裂が抑制されることで、腸内環境の悪化が抑制されていることが分かりました。

 しかし、Period遺伝子とUCPの関連や、健康寿命への影響など、さらなる研究が求められています。

紹介論文: Circadian regulation of mitochondrial uncoupling and lifespan. Ulgherat et al., Nature Communications 11, 1927 (2020)



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