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内臓痛覚の変化は腸内細菌叢に依存的である

 内臓痛覚過敏症では過敏性腸症候群(IBS)などの多くの機能性胃腸障害の特徴であり、鈍く広がった腹痛の症状がある。内臓痛関連の疾患は女性に多く見られるが、内臓痛に対する臨床研究の大半は男性のみを対象に行われており、治療の観点からは女性にも適応するように一般化されている。しかし、性差の問題から、男女で同じ治療が通用するとは限らないのが現状である。

 マウスにおいても、オスについては内臓痛には腸内細菌叢との関連が明らかにされているが、メスについてほとんど解明されていなかった。本研究においては、メスのマウスの発情周期と卵巣摘出に伴う内臓痛反応における腸内細菌叢との関与を調査している。

 本研究では、CRD(大腸拡張)に対するVMR(内臓運動反応)を定量化し、内蔵痛反応を通常の腸内細菌叢を持つマウスと、無菌マウスにおいて比較している。

 発情周期の前半では内臓痛を起こさないが、後半では内臓痛を起こすというように、発情周期の段階によって内蔵痛反応が変化するが、これは通常マウスのみでみられ、無菌マウスでは変化は見られなかった。また、卵巣摘出によってCRDに限らず熱刺激や機械刺激などの刺激によっても内臓痛は引き起こされることがわかっているが、本研究においてCRDに対して内臓痛を起こしたのは通常マウスのみであり、無菌マウスでは起こらなかった。

 加えて、発情期に高くなり、間期には低くなるエストロゲンは痛みを緩和する作用があるとされるが、このエストロゲンの内臓痛覚への関与を調査するため、卵巣を摘出してエストロゲンの産生が大きく減少したマウスにエストラジオールを皮下投与すると、内臓痛覚過敏が軽減された。

 以上のことから、内臓痛覚に対する反応は発情周期に依存的であり、その調節には腸内細菌叢が関与しており、また、卵巣摘出によって誘発される内臓痛覚過敏にも腸内細菌叢が関与していることが分かった。

 内臓痛の発情周期による調節の詳細な分子メカニズムやこの調節において腸内細菌叢がどのようなはたらきをしているのかという点の解明が期待される。

紹介論文: Estrous cycle and ovariectomy-induced changes in visceral pain are microbiota-dependent Tramullas et al., iScience 102850, 2021



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