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ノロウイルス治療薬開発の手掛かりとなるか

 カリシウイルス科に属する代表的なウイルスには、ヒトノロウイルス(HuNoV)があります。ノロウイルスの病原性に代表されるように、カリシウイルス科の多くは嘔吐や下痢、腹痛を引き起こすものがほとんどですが、その病原性を引き起こす詳細なメカニズムはあまり明らかになっていないのが現状です。

  本論文で、筆者らは同じくカリシウイルス科に属するTulanウイルス(TV)とTVが強く感染性を示すサルの細胞株(LLC-MK2細胞)をモデルとして、ウイルスが宿主細胞内でどのように自身の複製を促進しているのかを明らかにしました。特に、カリシウイルス科が普遍的に持つ非構造タンパク質であるNS1-2と呼ばれるタンパク質が、宿主細胞内のカルシウムシグナル経路を破綻させることを見出しました。また、論文中ではカルシウム蛍光タンパク質センサーであるGCaMP6を安定発現するLLC-MK2細胞(MK2-G6細胞)を用いることで、様々なタイムスケールにおいて、細胞内カルシウム濃度の変動を可視化することを可能にしています。

 まず、筆者らはTVが宿主細胞に感染してから8時間以降に、顕著な細胞内のカルシウム濃度上昇およびカルシウムスパイク数上昇が引き起こされることを明らかにし、thapsigargin(小胞体カルシウムイオンポンプ阻害剤)を用いることで、それが小胞体(ER)に貯蔵されるカルシウムイオン由来のカルシウムイオンによって引き起こされることを見出しました。ここで、筆者らは、多くのウイルスが持つビロポリンと呼ばれるウイルスタンパク質に着目しました。ビロポリンはイオンチャネル活性を持ち、宿主細胞のオルガネラに局在することで宿主細胞内のイオン組成を破綻させる働きを持つことが知られています。筆者らは、カリシウイルス科が持つNS1-2がこのビロポリン活性を持つと考え、in silico的な解析や構造学的な解析から、NS1-2が二回膜貫通型で、C末端領域にイオンチャネル活性を持つタンパク質(ビロポリン)であることを突き止めました。

 続いて、NS1-2自体の活性であることを確かめるために、RFPを融合したNS1-2を一過的にMK2-G6細胞に発現させて、24時間スケールでのカルシウムイメージングを行いました。この結果から、NS1-2の発現増加に伴ったカルシウム濃度上昇およびスパイク数上昇が見られたことから、NS1-2がビロポリンとして機能していると決定づけました。その後の解析から、C末端側にERへの局在に必要な膜貫通領域とビロポリンドメインが存在することも明らかにしました。

 最後に筆者らは、マウスノロウイルスとヒトノロウイルスが持つNS1-2の一過性発現でも同様の反応が見られるか確かめたところ、やはりカリシウイルス科が共通して持つNS1-2にはビロポリン活性があることを見出しました。これらのことから、依然として機能的に謎の多いNS1-2についての新たな知見を提供するとともに、NS1-2が、カリシウイルス科のウイルスが引き起こす感染症の新たな治療薬ターゲットになることを期待しています。

紹介論文: Recovirus NS1-2 Has Viroporin Activity That Induces Aberrant Cellular Calcium Signaling To Facilitate Virus Replicatio Strak et al., mSphere 2019



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