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アポトーシスによって促進されるサルモネラ菌の増殖

 アポトーシスは制御された細胞死の主要な形態で、発生や恒常性の維持において重要な役割を担っています。また、アポトーシスはサルモネラ菌などの腸内細菌によっても引き起こされ、腸での疾患を引き起こす事が分かっています。しかし、アポトーシスする細胞がサルモネラ菌などの細菌の増殖に与える影響については明らかになっていません。研究チームは、アポトーシスの際に細胞が放出するピルビン酸やウリジン二リン酸グルコース、フルクトース-1,6-ビスリン酸によってサルモネラ菌の増殖が促進されること、そしてそれにはピルビン酸からギ酸とアセチルcoAを産生するピルビン酸ギ酸リアーゼをコードしているpflBという遺伝子が重要であるということを明らかにしました。

 研究チームはまず、アポトーシスの際に細胞が分泌する物質がサルモネラ菌の増殖にどのような影響を与えるのかを調べるために、アポトーシスを誘導した腸上皮細胞の上清を含む培地でサルモネラ菌を培養しました。その結果、サルモネラ菌の増殖が促進されました。さらにそのサルモネラ菌をRNA-seqした結果、pflB遺伝子がアポトーシス上清での増殖で重要な働きをしている事が明らかになりました。そこで、pflB遺伝子に関連するピルビン酸、先行研究によってアポトーシスの際に細胞外に放出されることが分かっている6つの物質がサルモネラ菌のpflB遺伝子依存的な増殖に与える影響について調べた所、ピルビン酸、ウリジン二リン酸グルコース、フルクトース-1,6-ビスリン酸がサルモネラ菌のpflB遺伝子依存的な増殖を引き起こすことが明らかになりました。

 以上の結果は、アポトーシスの際に細胞が放出する物質が、腸内細菌増殖の燃料として機能して腸での疾患に影響を及ぼすことを示唆しています。しかし、放出された物質がどのようにして腸内細菌の増殖を促進しているかの詳しい経路については未だ不明であり、更なる研究が待たれます。

紹介論文: Microbes exploit death-induced nutrient release by gut epithelial cells. Anderson et al., Nature 596, 262-267, 2021



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