トピックス

脂肪は非がん肝細胞のグルコース代謝を促し、肝がんを誘発する

 肝臓での細胞の蓄積は糖尿病や肝細胞がんと関連している。筆者らは非がん細胞での脂肪の蓄積がグルコース代謝に与える影響を調べた。高脂肪食を与えると、本来健康であるはずのマウスの肝臓でのグルコース取り込みが亢進される。そしてグルコースからのセリン合成量上昇・ピルビン酸カルボキシラーゼの活性上昇・乳酸の産生量上昇といった、通常の細胞では見られないグルコース代謝が引き起こされる。さらにヒトにおいても、肝臓での脂肪の蓄積量とグルコースからの乳酸産生量には正の相関がみられた。

 ペルオキシソームではβ酸化に伴って活性酸素種が発生する。高脂肪食を与えられたマウスの肝臓では、ペルオキシソーム関連遺伝子の発現上昇およびペルオキシソームβ酸化酵素の発現上昇が見られた。肝臓培養細胞を脂肪酸の一種であるパルミチン酸に曝露すると、活性酸素種が産生される。それに伴い、グルコースの取り込み亢進と乳酸の分泌も引き起こされる。このことから、脂肪はペルオキシソームでのβ酸化を介してグルコース代謝を活性化している可能性が示唆される。

 また、マウスの肝がん細胞では、グルコースからのセリン合成量上昇・ピルビン酸カルボキシラーゼの活性上昇・乳酸の産生量上昇がみられた。つまり、高脂肪食を投与されたマウスの非がん肝細胞は、がん細胞と同様のグルコース代謝活性を示した。よって、肝臓における脂肪の蓄積が肝細胞がんを引き起こす過程には、グルコース代謝経路の変化が関連している可能性がある。

紹介論文: Fat Induces Glucose metabolism in Nontransformed Liver Cells and Promotes Liver TumorigenesisBroadfield et al., Cancer Research 81, 1988-2001, 2021



▲TOPへ戻る