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神経性無食欲症のラットモデルにおける腸内細菌叢と脳の変化

 神経性無欲食欲症(AN)は、主に若い女性に多くみられる慢性的精神疾患の一つである。本研究ではANのモデル動物であるABAモデルラットを用いて食餌量の制限による飢餓状態とこれに伴う多動性が引き起こす回し車運動が及ぼす腸内細菌叢の組成の変化と脳容積の低下に関して相関関係を調べた。

 実験に用いられた計49匹のウィスターラットは全てメスであり、ABAの他に体重減少のみ誘導されたRBW、食事制限無しで運動を有するコントロールのCRW、食事制限も運動も無い正常な状態のコントロールCから成る4つのグループに分けて検証が行われた。はじめに、腸内細菌叢の組成を調べたところ、食餌制限が行われたグループ(ABAとRBW)において、共に腸内細菌種の多様性が高く、運動の有無に関わらず細菌叢の組成が似ていることが明らかになった。また、コントロールのグループと比較して統計的に有意差が認められた6属の腸内細菌には、炎症の原因になりうるAkkermansia属やRuminococcus属が含まれる一方で、Odoribacter属などの善玉菌3属が含まれていた。これらの善玉菌は炎症の保護的メカニズムによって相対的存在比が増加したと考えられる。

  脳については、先行研究同様に食餌制限を受けたグループにおいて脳容積の減量ならびに大脳皮質、脳梁におけるGFAPの発現量が共に低下しているという結果が得られた。以上の結果から、ANモデル動物の腸-脳相関を調べたところ、腸内細菌種の数と大脳皮質容積の間には負の相関があることが明らかになった。また、善玉菌の一つであるLactobacillus属の相対的存在比と大脳皮質容積、脳梁容積の間には共に正の相関があることが分かった。

 筆者らは今後、宿主に良い影響を与える腸内細菌種を特定することで、補足的な栄養介入という新たなANの治療法の確立に役立つのではないかと展望を述べている。

紹介論文:Gut microbiota and brain alterations in a translational anorexia nervosa rat model. Trinh et al., Journal of Psychiatric Research 133, 156-165, 2021



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