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食事の糖によって増加した腸内細菌分類群は記憶機能を阻害する

 近年、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスが変化することで神経認知の発達や機能に影響を及ぼすことが示唆されています。例えば、生後間もない時期に脂肪や糖などを多く含む不健康な食事を過剰に摂取すると、腸内細菌叢が変化し、神経認知機能に支障をきたします。しかし、この2つの結果が生物学的に関連しているのかどうかについては不明です。

 筆者らはこの因果関係を調べるために、若いラットに糖入りの飲料を摂取させ、成体となった後に記憶機能に関するいくつかの行動テストを行い、その後腸内細菌叢と海馬組織の解析をおこないました。海馬とはさまざまな情報を関連づける役割を持つ部位であり、例えば空間記憶に深く関わっています。本論文では、特にこの海馬依存性記憶機能を測定するためにNOIC (Novel Object in Context)という行動テストが行われました。まず、若い頃に糖入り飲料を過剰摂取したラットはそうでないラットと比べてNOICのスコアが低いという結果になりました。すなわち、糖を過剰摂取したラットは成体になってから海馬依存性記憶が阻害されたということです。また、腸内細菌叢を調べたところ、糖を過剰摂取したラットでは何種類かの腸内細菌分類群の存在量が変化していました。相対存在量の上昇が見られたもののうち、Parabacteroides属のP. distasonisやP. johnsoniiといった細菌の数とNOICのスコアには負の相関がありました。そこで筆者らは抗生物質で常在の腸内細菌を減らした若いラットに前述の2種類の細菌を投与し、同じように成体になった後に行動テストなどを行いました。するとこちらのラットでもNOICのスコア低下が見られました。さらに、糖入りの飲料を摂取したラットとParabacteroides属で処理したラットについて海馬組織を調べると、それぞれ通常のラットに比べて発現している遺伝子に違いが見られました。

  以上のことから、幼少期に糖の多い不健康な食事を過剰に摂取すると海馬依存性の記憶機能に障害が発生するということについて、腸内細菌叢の異常が媒介していることが明らかになりました。同時に、腸内細菌分類群の中でもParabacteroides属の増加が神経認知機能の発達に悪影響を及ぼす可能性も示唆されました。

紹介論文:Gut microbial taxa elevated by dietary sugar disrupt memory function. Noble et al., Translational Psychiatry 11, 194, 2021



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