トピックス

中心体の増加が膵臓癌の浸潤を促す

 細胞はエクソソームという種々のタンパク質や核酸を内包した顆粒状の物質を分泌します。正常な細胞から分泌されたエクソソームは、他の細胞の機能を調節しています。しかし、癌細胞から分泌されるエクソソームは癌の悪性化や転移を促進する機能を持つことが報告されています。このエクソソーム間の機能の違いは内包する物質の変化だと考えられていますが、その変化を生み出すメカニズムは不明なままです。Sophie D. Adams博士らの研究グループは、癌細胞での中心体の数が正常な細胞と異なることに注目し、中心体の増加がエクソソームの分泌動態を変更し、癌の転移を促進する経路を明らかにしました。

 本研究では膵臓癌に焦点を当て、膵臓細胞株に中心体の増加を引き起こすドキシサイクリン(DOX)を投与した結果、エクソソームの分泌促進と細胞内のROSの増加が起こることを発見しました。また、この際のエクソソームには肥大化や特定のタンパク質の有無の変化が見られました。次にROSの増加を抑制するNACを用いた実験から、ROSの増加がリソソームの機能障害を引き起こし、その結果エクソソームの分泌が増加することを明らかにしました。中心体を増加させた膵臓細胞から分泌されたエクソソームを、膵臓において線維芽細胞様の機能を持つ膵星細胞に投与した結果、膵星細胞を活性化することができました。そして、癌細胞と活性化させた膵星細胞の共培養で形成したスフェロイドにおいて、浸潤性の突起を活発に伸ばす様子が観察されました。

 以上から、膵臓細胞において中心体の増加はROSの増加を引き起こし、増加したROSによりリソソームの機能が障害されることで、エクソソームの分泌が増加することが示されました。また、このエクソソームにはサイズや含有タンパク質の変化が起こり、膵星細胞を活性化して癌の浸潤を促進する機能を示したと考えられます。今後、エクソソームの変化を引き起こすより詳細なメカニズムが解明され、その変化を抑制することができれば、癌の進行を防ぐ新たな治療法となるかもしれません。

紹介論文:Centrosome amplification mediates small extracellular vesicle secretion via lysosome disruption
Adams et al., Current Biology 31,1-14, 2021



▲TOPへ戻る