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オキシトシンにより活性化するアストロサイトネットワーク

 オキシトシンとは脳の視床下部に存在する神経細胞(ニューロン)から分泌されるホルモンです。分泌されたオキシトシンはオキシトシン受容体を発現しているGABAニューロンやセロトニンニューロンを活性化することが報告されています。しかし脳内の細胞はニューロンだけではありません。脳内にはニューロンを補助するグリア細胞が多く存在するのです。その中でもアストロサイトと呼ばれる細胞は、血管とニューロンを繋ぎ、ニューロンへのエネルギー供給を行うなど、ニューロンと密接な関係にあることが知られています。しかし分泌されたオキシトシンがアストロサイトに及ぼす影響については研究がなされていませんでした。

 フランス国立科学研究センターのチームは、アストロサイトの約20%がオキシトシン受容体を発現している亜種であることを発見しました。しかし、オキシトシンアゴニストを投与すると、約60%のアストロサイトの活性が上昇しました。そこで研究チームは、オキシトシン受容体を発現しているアストロサイトと、発現していないアストロサイトで結合の仕方に違いがあるのかを調べました。すると興味深いことに、受容体を持っているアストロサイト同士は結合せず、受容体を発現しているアストロサイトは受容体を発現していないアストロサイトと結合していることを発見しました。つまり、オキシトシン受容体を持つアストロサイトはまばらに存在し、何らかの方法で受容体を持っていないアストロサイトへ情報を伝えるアストロサイトネットワークを構成している可能性が示唆されました。

加えて筆者らは、生体マウスにおいてアストロサイトを活性化させると、その情報がアストロサイトネットワークを通じてニューロンへ伝達されること、この経路が活性化するとマウスの不安行動が抑制されることを報告しました。脳内での働きが未知であったアストロサイトですが、情動にも影響を及ぼす重要な細胞であることが今回の研究で明らかになりました。まだまだ多くの可能性を秘めているのかもしれません。

紹介論文:Astrocytes mediate the effect of oxytocin in the central amygdala on neuronal activity and affective states in rodents.
Wahis et al., Nature Neuroscience 24, 529-541, 2021



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