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腸内細菌叢が血糖値の正常化を助ける仕組み

 2型糖尿病は、血糖値を下げる働きを持つインスリンの分泌低下やその作用の低下によって慢性的に血糖値が高くなる病気です。2型糖尿病の効果的な治療法として肥満手術が知られており、中でもスリーブ胃切除術は米国で最も頻繁に行われる肥満手術です。これまでの研究で、肥満手術によって胆汁酸や腸内細菌叢が変化することが報告されています。今回、研究グループはこれらの変化がどのような経路で、インスリンの分泌を促進するGLP-1の分泌を促進するのかを明らかにしました。

 研究グループは、まずスリーブ胃切除術によって起こる胆汁酸の一種CA7Sの増加が腸内細菌叢の変化によって引き起こされている事を明らかにしました。CA7SはGタンパク質共役受容体TGR5のアゴニストとして働き、GLP-1の分泌を促進する胆汁酸です。 さらに研究グループは、スリーブ胃切除術による腸内細菌叢の変化がどのようにCA7Sを増加させるのかを調べました。その結果、変化した腸内細菌叢によって二次胆汁酸リトコール酸(LCA)の門脈を介した輸送が増加し、それが肝臓のビタミンD受容体(VDR)に結合することによってCA7S合成に必要な酵素をコードするSULT2A1の発現を上昇させ、CA7S産生が促進されるといったLCA-VDR-SULT2A1-CA7S経路が明らかになりました。しかし、奇妙なことにスリーブ胃切除術後に門脈で増加するリトコール酸は、手術後の腸内細菌叢の変化によってその産生量が減少しました。研究グループは、胆汁酸トランスポーターAsbt、Ostαがその原因である事を突き止め、リトコール酸がAsbt、Ostαの発現を抑制するため、腸内のリトコール酸の減少が結果的に肝臓へのリトコール酸の輸送を増加させる事を明らかにしました。さらに、研究グループは腸内細菌の移植によってCA7S産生の増加を再現し、これらの一連の反応が腸内細菌依存的である事を示しています。 本論文では肥満手術によって変化する腸内細菌叢がどのようにして血糖値に影響を与えるか、その一つの経路を報告しています。このように腸内細菌の与える影響について研究が進めば、より効果的な2型糖尿病治療薬の開発につながるかもしれません。

 紹介論文:A microbial metabolite remodels the gut-liver axis following bariatric surgery Chaudhari et al., Cell Host & Microbe, 2021



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