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カルシウムチャネルの変異と自閉症症状の関係性

 Timothy症候群は、QT延長症候群(心電図におけるQT時間、心室が興奮してから抑制されるまでの時間、の延長を原因とした不整脈や心室細動などの異常が引き起こされる病気)の一つです。その中でも認知機能の低下や、ASD(自閉症)の症状を示すものをそう呼びます。

 これまでTimothy症候群は、L型の電位依存性カルシウムチャネルのアルファサブユニットの一つであるCav1.2における、G406R,G402Sのいずれかの点変異によって生じることがわかっていました。しかし、調べて行くと二つの点変異のうち、G406Rの変異においてのみ自閉症に似た症状が引き起こされているということがわかりました。そこで筆者たちは二つの点変異の入ったチャネルの作用がどの様に異なっているか、どうしてG406R変異体においてのみ自閉症様症状が引き起こされるかを調べるために、いくつかの変異体を作成し実験を行いました。

 するとCav1.2のG406R変異は、興奮性の刺激に応答してRas/MEK/ERK/CREB経路を活性化し、遺伝子の転写を促進しているということが明らかになりました。この変異体においては、通常チャネルが活性化する閾値以下の電圧状態であっても、チャネルが開き遺伝子発現が増加するようです。同様の働きはG402Sの変異体では見られません。

 また、どうやらこの転写の増加は細胞内へのカルシウムイオンの流入とは独立した現象だということもわかりました。転写が活性されてから、具体的にどの様な経路で自閉症が引き起こされているかはまだ明らかになってはいませんが、このG406Rでのみ見られる転写活性が、この変異体においては自閉症様症状を引き起こしているようです。これから似たように認知機能とチャネルが結びついた例を調べていけば、自閉症などの発症に関わる機構が分かるようになってくるかもしれません。

紹介論文:Evrim Servili, Michael Trus, Julia Sajman, Eilon Sherman, Daphne Atlas,Elevated basal transcription can underlie timothy channel association with autism related disorders, 紹介論文:Servili et al., Progress in Neurobiology 2020

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