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血液交換法が再灌流障害を軽減する

 脳血管疾患は、日本でがんよりも罹患者が多い国民病のひとつです。特に、血管が詰まる虚血性脳卒中は、虚血によるダメージに加え、血流が再開したことによるダメージがあり(再灌流障害)、深刻な後遺症を残すと言われています。

 この後遺症への対処として、疾患マウスの血液を正常マウスのものと交換してしまおう!という大胆な実験が行われました(論文)。虚血性脳卒中を再現したマウスの約10-20%量の血液を、正常マウスのものと交換する輸血手術を行うと、虚血により障害を受けている脳領域の面積や、神経障害度が減少することが分かりました。この血液交換は、再灌流の7時間後に行っても有効でした。現在、虚血性脳卒中は、発症後8時間以内に、脳血管内にカテーテルを挿入するという大掛かりな手術によって治療されています。輸血手術によって回復できるとなれば、患者さんへのダメージを大幅に少なくすることができます。

 筆者たちは、血液交換法により血液中の白血球(マクロファージや好中球など)の免疫細胞の分布が変わることで、免疫応答が抑制され、神経細胞が壊されるのを防いだと考えています。白血球が作り出すMMP-9という酵素は、脳のバリアを破壊し、脳組織により多くの免疫細胞を流入させ、炎症反応を大きくすることで脳組織を破壊してしまいます。血中のMMP-9濃度は再灌流によって高まりますが、血液交換法によって濃度を大きく下げることができました。輸血する血液中のMMP-9濃度を高めると、血液交換法による効果が失われることからも、再灌流障害にはMMP-9濃度が重要であることが示唆されます。

MMP-9の濃度を下げることが重要であれば、抗体医薬治療など、輸血以外の方法も考えられるかもしれません。この論文での発見が薬剤探索などに利用され、虚血性脳卒中の患者さんの予後がよくなることを願っています。

紹介論文:
Blood substitution therapy rescues the brain of mice from ischemic damage
Ren X, Hu H, Farooqi I, Simpkins JW.
Nat Commun. 2020;11(1):4078. Published 2020 Aug 25. doi:10.1038/s41467-020-17930-x

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