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睡眠不足が腸内の活性酸素を増加させ、寿命を縮める

 動物にとって睡眠はとても重要なものです。人間にとって、慢性的な睡眠不足は、集中力の散漫や思考力の低下などを引き起こし、誰もが経験したことのある感覚だと思います。この睡眠という状態は、身体にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。睡眠の役割は大きく4つに分類されます。1つ目は、脳の神経修復や記憶の整理や消去です。2つ目は、ホルモン分泌による体内時計の調節や細胞を成長させたり、修復を行います。3つ目は、免疫機能を賦活させ、風邪などの病気を早く治そうとします。最後に、身体の代謝によって産出された、様々な老廃物の除去を助けます。今回は4つ目の、睡眠による老廃物の除去に関してお話を進めます。細胞がエネルギーを作り出す際に、活性酸素種(ROS)を作り出します。このROSという物質は、外部から侵入してきた体内の菌を殺すという利点がある一方で、細胞を傷つけてがんや血管の疾患、老化を引き起こす欠点を持っています。ビタミンやポリフェノールなどを摂取することにより、体内のROSを減らすことができると言われています。最近の研究では、ROSの発生は睡眠と強い関係があると報告されました。

 今回、ショウジョウバエは睡眠不足によって腸内のROSが増加し、ROSが寿命の長さに関係していることが明らかになりました。ショウジョウバエの睡眠神経を強制的に活動させることや、物理的に振動を与えて睡眠を阻害した結果、腸内のROSが増加したが、他の臓器では増加していませんでした。この睡眠不足のハエは、正常なハエよりも短命であることが明らかになりました。睡眠不足のハエの腸内のROSを薬で減らすと、正常なハエと同等の寿命の長さに戻りました。これらの結果から、睡眠不足によって腸内で発生したROSが、何らかの理由で死を引き起こすと考えられます。今後は、なぜ腸内でのみROSが発生し、その結果として短命になったその理由について解析する必要がありそうです。

紹介論文: Vaccaro A et.al, Cell 181,1-22, 2020

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