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脳で起こるGLP-1受容体シグナルのはたらき

アストロサイトとは、脳内でニューロンと血管を繋ぐ重要な役割を果たす細胞であり、その働きとして脳のグルコース代謝や神経機能の調節が知られています。今回の論文では、そんなアストロサイトに発現するGLP-1受容体が、グルコース代謝やミトコンドリア動態に関わっていることを報告しています。

筆者たちがまず注目したのは、アストロサイトへのグルコース取り込み量についてでした。グルコースは細胞が呼吸を行いエネルギーを得るために欠かせない物質です。ところが培養アストロサイトにGLP-1を投与すると、グルコースの取り込みが抑制され、アストロサイト内のβ酸化(脂肪酸酸化)が促進されることが分かりました。また、今度は培養アストロサイトのGLP-1受容体を欠損させると、呼吸を司る細胞小器官であるミトコンドリアの動態が通常のミトコンドリアと異なる結果を示しました。これらの結果から、培養アストロサイトのGLP-1受容体シグナルは、細胞へのグルコース取り込み量とミトコンドリア動態に関与している可能性を示唆しました。

また、筆者らは生体レベルでのGLP-1受容体の役割を調査すべく、アストロサイト特異的にGLP-1受容体を欠損するノックアウトマウスを作成しました。このマウスに、グルコースを投与すると、通常マウスと比較して血糖値の上昇が穏やかになることが分かりました。加えて、筆者らはノックアウトマウスの脳内をPETスキャンで測定し、グルコース動態を可視化する試みを行いました。すると、飢餓状態のノックアウトマウスにおいて、脳内の様々な領域でグルコースの取り込みが増加していることが分かりました。しかし、餌を十分に食べているノックアウトマウスでは、全ての領域においてグルコースの取り込みが増加しているわけではなく、むしろ取り込み量が減少した領域もありました。

これらのことから、アストロサイトにおけるGLP-1受容体を介するシグナルは、マウスのグルコース代謝や脳のグルコース取り込みに関与していることが分かりました。GLP-1受容体欠損で起こるこれらの変化が脳機能に及ぼす影響を調べることが、今後の研究課題になりそうです。

紹介論文: Timper et al., Cell Metabolism 31, 1-17, 2020

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