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腸で見つかったもう一つのアミノ酸

“アミノ酸”という言葉を皆さんはご存じですか?きっとどこかでは聞いたことがあるのではなでしょうか。アミノ酸とは、私たちの身体を構成するタンパク質の原料となる、生きるために欠かせない物質の1つです。今この瞬間も、私たちの体内では数え切れない程のアミノ酸が合成され、そして消費されています。

そんなアミノ酸ですが、実は大きく分けて2種類のアミノ酸が存在します。L型アミノ酸とD型アミノ酸です。含まれるエネルギーの大きさやその性質は同等なL型アミノ酸とD型アミノ酸ですが、両者の違いはその構造にあります。この両アミノ酸の構造は”右手と左手の関係”のように線対称な構造をしており、この関係を”鏡像異性体”と呼びます。

そしてとても面白いことに、私たち哺乳類の体内で生産、利用されているほぼ全てのアミノ酸がL型アミノ酸です。近年の研究で、一部の臓器(脳や腎臓)でD型のアミノ酸が代謝経路に使用されている事が分かってきましたが、それまでは我々の体内にはL型アミノ酸しかないとまで考えられていました。

しかし今回、脳や腎臓だけでなく、我々哺乳類の小腸にもD型アミノ酸が存在し、しかもそれが腸内の免疫作用に関わっている事実が発見されました。では、通常L型アミノ酸しか合成できない我々の体内(小腸)にD型アミノ酸が発見されたのはなぜでしょうか。その犯人は意外にも、我々の腸を住みかとする腸内細菌たちです。この住民たちは私たちの腸内で生活し、排せつ物としてD型アミノ酸を放出していることが今回の研究により明らかになりました。

そしてさらに驚くべきことに、私たちの身体はD型アミノ酸を酸化するD型アミノ酸酸化酵素(DAO)を有し、腸内細菌から放出されたD型アミノ酸を過酸化水素(H2O2)等の抗生物質へと分解している事が明らかになりました。生成された抗生物質には、小腸に繁殖すると重篤な病気を引き起こすコレラ菌や腸炎ビブリオ菌を撃退してくれるパワーがあります。 どうやら私たちの腸内は、知らず知らずのうちに、腸内細菌によって守られてきたのかもしれません。 これを知ると、健康のためにも腸に良い食事を心がけようと思うようになりませんか?

紹介論文: Sasabe J et al., Nature Microbiology 1, 16125, 2016

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