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アストロサイトが脳血管再生を助けるしくみ

脳の血管は、事故による外傷や脳卒中によって傷つくことがあります。この損傷は神経変性を引き起こすため、アストロサイトが損傷の周りに速やかに集積し、傷ついた血管の代わりとなる血管の新生を助けたり、ニューロンの保護を行ったりします。

もともとアストロサイトには、ニューロンと血管での物質のやりとりを仲介する役割や、余分なイオンなどを吸収してニューロンがはたらく環境を整える役割、血管新生を調節する役割があることが知られています。しかし、血管損傷時のアストロサイトの応答にはいまだ不明な点が多く、血管新生を制御するしくみは分かっていませんでした。

本研究でドイツの研究グループは、アストロサイト内のミトコンドリアと小胞体の距離が、血管新生を制御する上で重要であることを示しました(論文)。

アストロサイトの一部の末端は、血管を取り囲む形態になっており、その中にはミトコンドリアと小胞体が局在しています。このミトコンドリアは、損傷が起こると一度断片化し、再び融合してチューブ化すると、血管新生を促進しました。これをミトコンドリアの融合を促進するタンパク質であるMitofusin2(Mfn2)をノックアウトすることで阻害すると、血管新生が抑制されました。このミトコンドリアの形態変化は、ミトコンドリアと小胞体との距離を変化させており、人工的に両者の距離を近づけると、ミトコンドリアの形態に関わらず、血管新生が促進されることが分かりました。

またMfn2の有無は、Ca2+輸送に関わるタンパク質の発現を変化させることも分かりました。これらの結果からアストロサイトでは、ミトコンドリアがチューブ化して小胞体の近くに局在すると、血管損傷によって組織に溜まったCa2+を回収でき、血管新生を促すのではないかと推測されました。

血管付近のミトコンドリアと小胞体の距離変化だけで、血管新生が制御できるのは興味深いことです。しかし、血管新生の制御はCa2+変化だけで説明できるのか、そもそもミトコンドリアはなぜ一度断片化するのか、その間は何をしているのかが気になるところです。今後の研究が待たれます。

紹介論文: Gӧbel et al., Cell Metab. 2020;31(4):791‐808.e8.

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