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メタボローム解析による新規糖尿病治療薬の発見

動物の身体は様々な化合物を代謝しており、例えばタンパク質や核酸、糖、アミノ酸、脂肪酸が挙げられます。近年、統計学を利用して、これら数百種類の代謝産物を網羅的に解析する方法が発展し、メタボローム解析といいます。

この解析手法を用いて、1型および2型糖尿病の新規治療薬候補が発見されました。血中の101種類の代謝産物をメタボローム解析した結果、健常者と比較して糖尿病患者の血液中では、4-クレゾールの濃度が低いと判明しました。そこで、4-クレゾールを与えたマウスの血糖値や体重を測定しました。4-クレゾールを与えたマウスは、対照群と比較して有意に体重増加を抑制し、脂肪量の増加を抑制しました。また、4-クレゾールを与えたマウスは、インスリン分泌が増加し、血糖の上昇を抑えられました。さらに、そのマウスは、一日に摂取する食事量が減少し、食欲抑制効果があることも判明しました。この結果から、4-クレゾールは血糖を制御し、肥満を予防する効果があると示唆されました。

研究グループはさらに、2型糖尿病のモデルラットに4-クレゾールを投与しました。その結果、対照群と比較して、インスリン分泌が増加し、血糖の上昇を抑制しました。そのマウスの膵臓にある膵島の大きさを計測したところ、膵島細胞が増殖し、肥大化していることが分かりました。これらの結果から、4-クレゾールは、2型糖尿病の患者さんのインスリン分泌能を増強し、血糖値の改善に効果を有する可能性が示唆されました。

4-クレゾールは、哺乳類の臓器がタンパク質を代謝してできる物質であり、常に体内に存在しています。また、トマトやアスパラガスなどの食べ物や、コーヒーやワインなどの飲み物に含まれていることが知られています。4-クレゾールは、腸内細菌でも代謝物として産生されているとの報告があり、腸内細菌叢を調整することで糖尿病を治療する画期的な方法が開発されるかもしれません。

紹介論文: Brial, et al., Cell Reports, 30, 2306-2320, 2020

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