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食事中の脂質がドーパミン依存的行動へ影響を与える

 生き物が食事をする理由は二つあります。一つが代謝的要求を満たすためで、もう一つは食欲や、感情などを満たすためです。このうち後者の「感情」には、MCL回路という回路が関わっているとされています。MCL回路は、主にドーパミンを利用した情報伝達を行う回路で、報酬系に関わっています。

ではこの回路がどのように食事と関わっているのでしょう。実はこの回路には、ドーパミンの他に、食事から取り入れられた栄養もまた作用していることが知られていました。つまり、食事性の栄養がMCL回路におけるドーパミン伝達を変化させているということです。しかし、具体的にどのようなメカニズムで食事性の栄養がMCL回路に影響しているかはわかっていませんでした。

今回の紹介論文では、まずTGをマウスの頚動脈に投与し、シグナル伝達経路の神経活動の変化や翻訳活性、アンフェタミン依存的な歩行運動の変化などを調べる実験を行いました。すると、食事で取り入れられたTGが血漿から脳へ伝達され、2型ドーパミン受容体(DRD2)を発現している中型有刺神経細胞(MSNs)および腹側被蓋野(VTA)のドーパミン神経に、リポタンパクリパーゼ(LPL)を通じて直接的に働きかけているということが明らかになりました。

さらに、TGがドーパミン依存性の動作にマウスを用いたCPP(条件付け嗜好性)試験によりTGはそれ自体が強化子として働き、TGの摂取行動を強化することがわかりました。この結果は自己投与実験においても同様でした。しかし、この結果とは別に、TGの投与は報酬に対する閾値を下げ、より少ない報酬でも満足できるようになるという結果も得られており、実際のところTGが強迫摂食や肥満において促進/抑制どちらの働きをしているのかははっきりとはしていないようです。

人においても食べ物に関連した刺激に対する同様な反応が見られることが示唆されています。この研究が肥満や過食の病理の新たな治療法への手がかりとなるかもしれません。

紹介論文: Berland et al., Cell Metabolism (2020)

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