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柑橘類がメタボを改善!?

メタボリックシンドローム(MetS)とは心筋梗塞や脳梗塞の原因となる動脈硬化を進行させる危険因子を複数併せ持つ状態のことを言い、そのため世界で最も健康を脅かす病気の1つとされています。近年、腸内細菌叢の乱れとそれに伴う分岐鎖アミノ酸(BCAA)濃度の上昇がMetSの進行と深く関連することが報告されており、腸内細菌叢とMetSの関係性や治療への応用が注目されています(論文1)。

一方でMetSの抑制効果として、柑橘類の皮から抽出されたポリメトキシフラボン(PMF)は全身血液中に吸収される割合が低いにもかかわらず、齧歯類モデルにおいて毒性を示さずに抗肥満効果を示すことが発見されました(論文2、3)。しかし、PMFの抗肥満効果の詳細なメカニズムは不明確でした。そこで中国薬科大学のZeng博士らは、PMFが腸内細菌の代謝の基質となってホストの細菌叢を正常化し、アミノ酸代謝やその他の代謝異常を調節することでMetSを改善するのではないかという仮説を立てました。

研究グループは、8週間にわたり高脂肪食を与えられたマウスにPMFを豊富に含む抽出液(PMFE)を投与し、高脂肪食によるMetSに関連する因子がどれほど抑制されたかを調べました。高脂肪食を摂取したマウスは通常食を摂取したマウスに比べて体重の増加、精巣上体脂肪の上昇、肝臓の重量増加、血清中のコレステロール量の増加、糞便中のBCAA濃度の増加などが見られました。しかし、PMFEを投与したマウスでは、これらの影響が通常食のマウスのレベルまで抑制されました。また、高脂肪食のマウスの糞便にはフィルミクテス門の細菌が増加していましたが、PMFEを投与したマウスではバクテロイデス門の細菌を増加していることが分かりました。さらに、PMFEを投与したマウスの糞便を高脂肪食のマウスの腸に移植した結果、PMFEを投与していないにもかかわらず同等の効果を示しました。

 これらの結果から、PMFは腸内細菌叢の改変と、それに伴う代謝の調節によって安全にMetS抑制効果をもたらすことが示されました。今後、PMFはMetS治療のための有望なプレバイオティック剤への応用など植物性化学物質によるMetS治療法の開発につながることが期待されます。

紹介論文: Su-Ling Zeng, et al., Science Advances 03 Jan 2020:Vol. 6, no. 1, eaax6208
論文1:H. K. Pedersen et al., Circulation Research(2017)
論文2:D. Saigusa et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry(2011)
論文3:J. Guo et al., Journal of Agricultural and Food Chemistry(2016)

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