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感情を操作する

人間は、内部の感情を表情として示すことで、他の人間とのコミュニケーションを円滑に行っています。この「感情」は、人間だけがもつものなのでしょうか。他の動物や、はたまたロボットではどうでしょうか。脳の神経活動から感情がつくられる仕組みは、いまだ解明されていません。

神経回路を観察しやすいマウスなどの動物をモデルとして、感情と神経活動の関係が調べられてきました。しかし人間と異なり、動物の感情を正確に読み取ることは難しく、熟練した技術者(長期飼育者など)の経験を元にして判断されるなど、定量性にかけるものでした。そこでドイツのマックス・プランク神経研究所のグループは、マウスの表情を機械学習によって分析し、感情を推測することで、神経活動との関係を明らかにすることを目指しました(論文)。

まずはマウスに「痛み」「甘み」「苦み」「不快感」「恐怖」などの刺激を与え(少し可哀想ですが…)、そのときの表情を記録しました。マウスは刺激に応じてさまざまな表情を見せ、この表情のパターンを機械学習させることで、マウスの表情から感情を予測することに成功しました。

続いて彼らは、感情の操作に挑みました。眠っているマウスの脳に電極を刺し、感情に関わるとされている脳の領域を電気刺激したのです。するとマウスの表情は変化し、電気刺激によってマウスの感情が変化している可能性が示されました。この仕組みを応用すると、マウスにとって嫌いな刺激も、脳への電気刺激によって好きな刺激だと感じさせることができました。

イヌやネコ、もちろん人間でも、機械学習によって表情から感情をリアルタイムに知ることができ、電気刺激によって感情を操作できる時代が来るかもしれません。そもそも動物はなぜ、感情によって表情を変えるのでしょうか。また、ロボットに神経回路と表情の関連を学習させれば、感情をもてるようになるのでしょうか。「感情」とは何か、まだまだ議論の余地がありそうです。

論文:Dolensek et al., Science (2020)

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