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脳内コミュニケーションの新役者、エクソソーム

神経細胞とその周囲を取り囲むグリア細胞は、正常に機能するために、電気的シグナルやホルモンなどの液性因子をやりとりすることにより、細胞間コミュニケーションを行っています。 この細胞間コミュニケーションの担い手として、近年注目されているのが、「エクソソーム」と呼ばれる細胞外小胞です。 エクソソームは直径50-150 nm 程の脂質二重膜に囲まれた細胞外小胞で、中にmRNAやマイクロRNA(miRNA)といった核酸や、タンパク質を含み、分泌されたエクソソームを受け取った細胞では、これらの核酸やタンパク質によって影響が及ぼされ、細胞間のコミュニケーションを行っていると考えられています。 (先行研究では、大脳皮質の神経細胞から分泌されたエクソソームが、アストロサイトに受容され、内包されたmiRNA-124によってアストロサイト内のグルタミン酸トランスポーター(GLT1)の発現が亢進されることが明らかとなっています(論文)。

このようなエクソソームを介した細胞間コミュニケーションは中枢神経系の恒常性維持に関わるだけでなく、神経損傷や神経変性疾患との関連も示唆されているため、その分泌メカニズムや内包された核酸の及ぼす影響を調べることが重要な課題となっています。 これまで、中枢神経系でのエクソソーム解析は培養系での実験が主でした。そこでタフツ大学のMen氏らは、エクソソームを解析できる遺伝子改変マウスを作成し、エクソソームのin vivo解析を可能にしました(論文)。

具体的には、CRISPR Cas9システムという遺伝子改変技術を用いて、神経細胞に特異的に、エクソソーム特異的に発現するCD63というタンパク質を可視化しました。 このマウスを用いて、神経から分泌されたエクソソームが脳内のどこへ局在し、運搬されているのかを調べたところ、神経細胞由来のエクソソームは大脳皮質、海馬、線条体など脳内の広範囲に分布し、さらに周囲のグリア細胞、とくにアストロサイトへ局在していることを見出しました。 このアストロサイトに局在したエクソソームに含まれるmiRNAの種類を調べたところ、神経由来のエクソソームに多く含まれるmiR-124-3pが存在することがわかりました。つまり、神経由来のmiR-124-3pがエクソソームを介して神経からアストロサイトへ運搬されていることがマウス個体において明らかとなったのです。

さらに、このmiRNAの機能を検証した結果、miR-124-3pはアストロサイトにおいて、さらに別のmiRNAの発現を抑制することで、GLT-1遺伝子の発現を亢進させ、最終的にグルタミン酸の取り込みを制御することを明らかにしました。 今回の研究では、細胞特異的にエクソソームを可視化した遺伝子組み換えマウスの作製に成功したことで、中枢神経系において個体レベルでエクソソームの移動や機能を解析することが可能となりました。 近年、アルツハイマー病やパーキンソン病、ALSなどさまざまな疾患の病態の進行や抑制とエクソソームとの関連が報告されています。今後、エクソソーム解析が進展することで、これらの病気の病態解明、診断、予防、治療法の開発などに役立つことが期待されています。

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