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胃腸の感覚②

腸管神経系は食道から肛門まで繋がっており、中枢神経系を介さずとも自律的に消化運動等の制御を行っていると言われています。また、腸管神経系は中枢神経系のように複雑なネットワークを構築していることから、「第二の脳」とも呼ばれています。

この第二の脳は、首元にある迷走神経節を介して頭脳と繋がっています。そのため、空腹感や満腹感、心理的なストレスによる腹痛などは、これらの神経によって感じ取ることができています。一方、ミクロな視点において、どのようにして腸管の細胞が神経細胞に情報を伝えているのでしょうか。

ケンブリッジ大学の研究員らは、腸内細胞によってGLP-1(グルカゴン様ペプチド1)と同時に分泌されるATP(アデノシン三リン酸)が、迷走神経に情報を伝達していることを示唆しました。GLP-1は腸細胞から分泌されるホルモンで、膵臓に作用してインスリンの分泌を促す役割や、迷走神経を介して脳に作用し、食欲を抑制するはたらきもあります。ATPとは、細胞の活動に必要なエネルギー源であり、また神経どうしで情報を伝える役割も持っています。

腸内細胞は、栄養を感知するとGLP-1を分泌することが知られており、それと同時に分泌が観察されたATPは、重要な役割を持つと筆者らは考えました。そこで、ATPによる腸細胞と神経細胞への影響を調べました。その結果、この共分泌されるATPが、腸細胞の電気的な応答を誘発し、腸細胞内の環境を変化させる要因であり、また迷走神経細胞の興奮を引き起こすことがわかりました。

この研究結果から、腸細胞が栄養素を感受すると、GLP-1と同時にATPが分泌され、迷走神経を介して脳に情報が伝わることが考えられます。この両者の物質による信号が、脳に満腹を伝えているのかもしれません(論文)。



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